トレンド&テクノロジー / 冨田和弘が斬る!建築ビジュアライゼーション業界
第2回:建築ビジュアライゼーションとBIM(Building Information Modeling)の関係

更新日 2009.03.03

ロンドンで2008年に開催されたBIMイベント「Build Live London」の参加者会場風景(後述) ここ数年、建築業界で何かと話題に事欠かないBIM(Building Information Modeling)という考え方(システム)がある。建築ビジュアライゼーションに関わる業務を行っている私とは直接的に関わりがなさそうな印象を持つBIMではあるが、面白い事に最近は私自身がBIM絡みで建築ビジュアライゼーションを語る場面が増えてきている。普段は建築パースやアニメーションを制作する事を主体として仕事をしている者にとって、BIMはあまり関係なさそうだという印象を抱きがちではあるが、いやいや実はビジュアライゼーション関係者も積極的にその潮流に乗って損は無しという思いがある。そこで今回はBIMが建築ビジュアライゼーションにもたらす影響や、逆に建築ビジュアライゼーションはBIMにどういう影響を与える事が出来るのかをお話して見ようと思う。

「Build Live London」で発表された計画地。この計画地を対象に48時間で設計を行う。建築ビジュアライゼーションとBIMの関係を語る前に、まずBIMとは何ぞや?という疑問をお持ちの方もいると思うが、ここでBIMの解説をしていると文章が足りなくなってしまうほど奥が深いし、簡潔に話して誤解を招く事になってはBIMの普及に努めている方々にお叱りを受けかねないので、ここでは建築ビジュアライゼーション側から見たBIMの捕らえ方という切り口でお話したいと思う。

建築ビジュアライゼーション関係者から見たBIMの最大の特徴は、設計の上流から施工段階、更には竣工後に至るまでその中心に3Dモデルがある事だ。これまでパースやアニメーションを制作する際の多くは2DCAD図面から3Dモデルを起こしていたと思うが、このモデリング作業が曲者で図面の不整合ならまだしも、まだ確定していない図面から制作しなければならなかったりと、レンダリング作業に入る前にモデリングの正否の確認で煩雑なやり取りが発生していたし、更には締め切り間際の設計変更などもありレンダリング作業に大きな負担になっていた。

「Build Live London」で日本チームが提出した構造解析モデルこれがBIMによって設計側から確定に近いモデルを入手できるようになればこれは大きな変化だ。誤解を恐れずに書けばモデリング作業の煩雑なやり取りから開放されて絵作りに没頭でき、成果品のクオリティを1ランクも2ランクも上げる事が可能になる。これは設計者にも言えることで、これまではパースを制作するためにはモデリング→レンダリングの2工程のチェックをしなければならなかったが、レンダリング部分の表現のチェックだけに集中できるようになる。更には設計の早い段階から3Dモデルが存在する事により、これまではあまりビジュアライゼーションを活用していなかった(出来なかった)企画・計画レベルや施工段階での制作量が増大する可能性が高い。それはパースやアニメーションといった従来の制作物だけでなくリアルタイムレンダリングの制作をも普及させるポテンシャルがある。

「Build Live London」で日本チームが提出した風シミュレーションモデルここまで読んで来てBIMの動向もチェックしているCGデザイナーやCGプロダクションの経営者からは「本当に仕事量が増えて上手くいくの?」という声が聞こえて来そうだ。その疑問の理由はBIMの導入効果の1つとしてコスト削減が謳われていて、Revitなどはフル機能ではないにしても簡便にメンタルレイが使用できるため設計者がパース制作を行えるようになり、それによってCGの外注費の削減に繋がっている等のメディアからの情報をキャッチしているからだと思う。

これらの情報に嘘は無いだろうと私は思っているが、建築業界全般の話にまではなっていないと考えている。確かに中小の設計事務所やゼネコンでは大きな会社に比べて社員数も非常にコンパクトだしコストの締め付けもより厳しいため可能な限り内作を勧めるのは道理で、BIMによってコスト削減できることは積極的に推進する事は間違いないからだ。ただこれは中小規模の会社に見られる例で、建築ビジュアライゼーション業務の発注総量から見た場合の割合は少ないだろう。

考えて見て欲しい。ここ最近自動車産業や製造業で派遣切りやリストラなどのニュースが日々メディアを騒がせているが、建設業もその荒波の中にいる。バブルが弾けた以降のリストラで現状でも社員が目いっぱい働いてもこなせないような業務を何とか乗り切っている時に更に人を減らすのだからより業務が過酷になるであろう事は想像に難くない。勿論業務量の減少に伴うリストラであるから人減らしは見合っているように思えるが、実際は黒字右肩上がりに回復するため業務量の削減に見合う以上の人員が削減されていると考える方が普通だ。だとすれば本業の設計が更に忙しくなる中でCGのスキルを身に付けることは容易ではない。これまで建築ビジュアライゼーション業務の外注発注率が高い会社(クライアント)ほど内作は難しい。勿論、どのような規模の会社であっても経費削減のために外注を減らして内作を増やす試みはあるだろうが、建築ビジュアライゼーションの適用範囲が増えた中での一部分であろう。

「Build Live London」で日本チームが提出したビジュアルイメージこの様な事から建築ビジュアライゼーョンの業務量は増える傾向にある事は間違いないと思っている。ただ、その仕事の形態が変わる事は飲み込めなければならない。それは3Dモデルを発注者側が用意するのであるからパース制作費を下げる動きが出てくる事と、これまでマンション不動産絡みの広告系のCG制作を主体に事業を展開していたのであれば、設計のワークフローに適応した制作期間(短納期)、コスト(低コスト)、表現手法(短納期に負けないクオリティ)を身につけなければならない事だ。

前者についてはその分業務量を増やすか、高品質により価格を維持するかの2択になろう。後者については、これまでマンション不動産絡みの広告系の仕事が主体だったところは心してかかった方が良い。それは私が上手くいっていない事例しか見聞きした事が無いからだ。その内容をお伝えするには紙面の都合上難しいので割愛するが、厳しい状況である事は間違いない。逆に短納期の(一週間前後)制作業務に上手く適応出来ている前述の会社があれば積極的に情報発信をして同業者に知らせてあげて欲しい。何れにしろこれからは設計者の痒いところに手が届く業務の進め方ができて、建築ビジュアライゼーションの高い表現力とその引き出しを多く出来たところが台頭してくるだろう。

日本で開催されるBIMイベント「Build Live Tokyo 2009」で設計条件として発表された予定地。BIMに絡んだ建築ビジュアライゼーション業務の変化について語ってきたが、建築ビジュアライゼーションのBIMに対する取り組みとして、私も参加する2月末に開催されるBuild Live TokyoというBIMの可能性を探る48時間で設計を行うイベントがあるのでチェックしてみて欲しい。私が参加するチームはBIMにおけるビジュアライゼーションの可能性を試す事を目的に掲げているチームなので他の参加チームとは趣の異なる成果を示せそうで私自身非常に楽しみにしている。

執筆時点ではまだ開催前だが、皆さんがこれを読まれる頃にはHP上で参加各チームの取り組みや成果品を見れると思うので、建築ビジュアライゼーションがBIMに果たす役割と可能性をご自身の目で見て考えてもらいたいと思うと同時に、私が今回語っているような事が本当に起こるのかどうかの判断材料にして頂ければ幸いだ。参考の写真として昨年ロンドンを舞台に開かれた世界規模の同様のイベントを載せておくのでHPと併せて見て貰いたい。(HP http://bltokyo2009.seesaa.net/

更新日 2009.03.03
著者プロフィール
冨田 和弘
冨田 和弘
Next Picture株式会社 代表
1990から2007年まで大成建設設計本部に所属し、プレゼンテーションGrのプロジェクトリーダーとして建築家原広司氏、伊東豊雄氏との多数のプロジェクトをはじめ、大規模プロジェクト・海外プロジェクト・設計コンペ等にCGディレクター及びデザイナーとして参画。2008年に株式会社未来技術研究所の建築ビジュアライゼーションセンターの所長に就任。2009年より独立し現在に至る。2006年より京都大学建築学科非常勤講師。建築ビジュアライゼーションの講演、執筆多数。一級建築士。
HP:www.next-picture.co.jp

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