トレンド&テクノロジー / 冨田和弘が斬る!建築ビジュアライゼーション業界
第13回:Solutionという仕事の考え方 その2

更新日 2011.01.17

明けましておめでとうございます。本コラムも13回目を迎える事が出来ました。これもひとえに読者のみなさんのお陰です。本当にありがとうございます。感謝の意味を込めて、今年も宜しくお願いいたします。
(本来は12月にあげるべきコラムが遅れてしまいました。のっけから申し訳ございません。)

今回も前回に引き続きSolutionという観点で私たちの建築Visualizationという仕事を考えて見ます。前回は簡単な事例を示してSolutionを考えてみました。また、そのためには建築業界の情報収集が重要である事をお話しました。今回はSolutionを前提とした業務に対するアプローチについて考えて見たいと思います。


Solution型の仕事が出来ているか?

みなさんのクライアントは? と、訪ねられたら何と答えますか。

ゼネコン、設計事務所、デベロッパー、ハウスメーカー....。大凡ここに挙げた範疇に収まる方が多いのではないかと思いますが、ではこれらのクライアントに対してSolution型の仕事が出来ていますか?

答えに窮している方も多いかと思います。そもそも「外観パースを1枚描いて下さい」といって、図面を渡される仕事にSolution型の仕事が出来るのでしょうか? 答えは「非常に難しい」という事になります。

かくいう私もここで挙げたタイプの仕事ではSolution型の仕事はほとんど出来ていません (あきらめずに様々なトライはしていますが)。 前回のコラムでお話ししたように、この類の仕事はすでにパースというSolutionをクライアントが持っていて、その制作を外注しているに過ぎません。そもそもSolutionの提案が出来ないタイプの仕事なのです。(図1)

13solution2_01.gif

では、どのようにすればSolution型の仕事が出来るのでしょうか?

私は冒頭で皆さんのクライアントについてお聞きしました。ここに解答が隠されています。実は私が挙げたクライアントの中で仕事の種類として1種類だけ趣を異にするものがあります。
最近はやりの脳トレのTV番組のようですがわかりますか?

答えは「デベロッパー」です。ピン!と来ましたか?
内容によっては必ずしもデベロッパーだけ種類の違う仕事という訳ではありませんが、大凡間違っていないと思います。

もっと正確にお話しすると、デベロッパー以外の業種でも2つに分ける事ができます。 それは業種というより職種になりますが、主たるクライアントの職種が設計又は設計に近い所からの発注か、営業のようにそれ以外の所からの発注かという違いです。
もうお分かりと思いますが、設計からの仕事の場合はSolutionのコンテンツ制作をお手伝いするだけで、仕事を発展させる事が難しい仕事です。一方、営業や企画、広報などの部署からの仕事は、彼らのターゲットである顧客に対してどの様な提案(ここでは提案内容ではなく、提案手法を指します)をしたらより効果が高いかを常に考えている部署なので、CG制作者から見ればSolutionを提案する機会が多いクライアントと言えるのです。
逆にデベロッパーからの仕事でも、間に広告代理店が入っていて、この広告代理店からの発注業務の場合は設計からの発注と違いが無くなります。それは広告代理店がクライアントに対してSolutionを提供し、それに基づいてSolutionのコンテンツ制作を私たちが受注する事になるからです。要するに、設計関係者以外から仕事を受注する事がSolution型の仕事の第一歩になります。(図2)

13solution2_02.gif


Solution型の仕事をするためには

設計関係から来る仕事から脱却する事がまず第一歩です。
勿論設計から仕事を受けるなという訳ではなく、設計部署以外の営業を強化するという事です。また、同じ設計からの仕事でも関係者に営業部門の人間など他部署の人間がいる場合には、例えパース制作の依頼でも様々な手法をPRしましょう。
これまでこういった営業をしていなかった方々は、営業戦略を練るようにして下さい。戦略を考える際に特に重要なのが業界の情報収集です。特に建築CGと一見関係のなさそうな所にヒントは隠されています。今、業界で問題になっている事は何か。トレンドとなっている事はなにか、またそこに対してどういったアプローチが考えられるか等々、考えるべき事は山ほど有ります。また、CGの技術的な面にしても建設関係では無く、世間一般に目配りする事が大切です。世間一般で何が話題(トレンド)になっているかハード面、ソフト面を含めて考えて見ましょう。簡単な例を挙げておきますので参考にしてみて下さい。

13solution2_03.gif

最後に戦略を練ったはいいが、営業先が無いというお困りの方は、そういった営業先をもった方(会社)と、まずは協業するといった手法でトライしてみて下さい。建築CG業界は単純な仕事の外注は行いますが、お互いの強みをシェアして協業するといった風土があまりないようですが、これを期に協業する事で仕事の幅を広げる事を体験してみてもらえればと思います。


Solution型で仕事をするメリット

ここまで読んで結構大変そうだと思った方、ちょっと考えて見て下さい。
Solution型で仕事をするメリットは何だと思いますか? 事例として仕事の幅を広げる事は書きましたが、最大のメリットは何だと思いますか?

それは受注する仕事のフィーが大きくなる事です。

場合によっては0が1つ2つ変わってくる位の違いがあります。原資となる財布が違ってくるのですからそれは当然です。例えば設計コンペのパースを受注した場合は、コンペの予算から捻出されます。勿論コンペなので実際に設計が仕事を受注出来るかどうかわからない仕事です。そんな仕事で潤沢なフィーでCG制作を行える訳がありません。受注している仕事にしても、もともと設計ではCGのための予算を組まないケースが殆どのため、これも望み薄です。マンション広告のパースは財布が違うので単価は上がりますが、パースやアニメといった単体の仕事を受けている限りは0が変わってくる仕事にはなり得ません。

もし、Solutionと行った形で仕事が行えるとすれば、コンテンツをCG制作側で決められます。どの様に展開(web、紙、DTPR)するかも此方から提案出来ます。いわば、これまで「何日までに、パースを、3カット」といった依頼内容を自分でコントロールする事が可能になります。そうすると1つのプロジェクトで多くの制作物を受注出来る事になりますし、単価も設計マターの仕事よりは確実に取れるようになります。簡単に言えば、1プロジェクトで3桁万円は普通で4桁も珍しくない仕事になります。また、財布が営業経費だったり宣伝広告費だったりするので、この数字は無茶でも何でもありません。

ここまで読んだ方でピンと来た人もいると思いますが、Solution型の仕事とは広告代理店の仕事に近い形態だという事です。そう考えれば4桁万円の仕事というのが夢物語でない事を実感出来るのではないでしょうか。どうです、戦略を練ってみる気になってきましたか?


最後に

Solution型の仕事について話をしましたが、ご理解頂けたでしょうか。私もSolution型の仕事をしたいと思い、起業以来地道に種まきをしてきましたが、今年ようやく実を付けそうな所まで来ました(勿論、台風で根こそぎ収穫できないというアクシデントの可能性は十分にありますが)。この手の仕事は実を結ぶまでに時間がかかるため、せっかちな私向きとは言えませんが、今後の建築Visualization業界を生き抜く、否、成長していくためには避けては通れない道だと考えています。

あまりにも考える事、やる事が多くて辟易してしまう事も無いとは言えませんが、みんさんも将来を見据えて、Solutionといった考えで業務戦略を考えて見られては如何でしょうか。
このコラムが皆さんの発展に何らかのお手伝いが出来たようであれば幸いです。事例として私が取り組んでいるSolution型業務が上手くいけば本コラムでもご紹介しようと考えていますので、ご期待下さい。

13solution2_04.jpg
JARAに応募したパース

最後に過去コラムで取り上げたJARAの優秀作品がHPで公開されていますのでお知らせします。様々な表現手法が用いられているパースは必見です。是非ご覧下さい。
また、拙書「速習 建築CGパースマスターブック エクステリア編」も宜しくお願いいたします。

更新日 2011.01.17
著者プロフィール
冨田 和弘
冨田 和弘
Next Picture株式会社 代表
1990から2007年まで大成建設設計本部に所属し、プレゼンテーションGrのプロジェクトリーダーとして建築家原広司氏、伊東豊雄氏との多数のプロジェクトをはじめ、大規模プロジェクト・海外プロジェクト・設計コンペ等にCGディレクター及びデザイナーとして参画。2008年に株式会社未来技術研究所の建築ビジュアライゼーションセンターの所長に就任。2009年より独立し現在に至る。2006年より京都大学建築学科非常勤講師。建築ビジュアライゼーションの講演、執筆多数。一級建築士。
HP:www.next-picture.co.jp

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