トレンド&テクノロジー / 冨田和弘が斬る!建築ビジュアライゼーション業界
第12回:Solutionという仕事の考え方

更新日 2010.09.29

今回はレンダリングスキルというCG制作業務のミクロな話題から、建築ビジュアライゼーション業務というマクロな話題に戻します。タイトルにある「Solution」という言葉は、以前から良く使われる言葉でテレビCMなどでも良く使われているので耳に馴染んでいるかと思いますが、自身の業務に振り返った時にこのSolutionという言葉から想像される事が何かありますか? Solutionを訳せば「ある問題に対する解答や解決法」という事になりますが、そう考えればみなさんが普段行われている制作業務は全てSolutionといって問題なさそうです。では何故このコラムでわざわざ取り上げているかというと......。


建築業界のSolution

ある著名建築家は自分が設計した建物を「Solution」と呼んでいます。

一般的に建築家や設計者は自分が設計した建物を「作品」という呼び方をしています(みなさんの中にも業務で制作したパースを「作品」と呼んでいる方がいると思いますが)。私はこの事に少し違和感を覚えています。クライアントが建築家に対して、「先生、私は先生の建築に常日頃感銘を受けていました。今回は先生の思うように設計して下さい。」というような芸術家に彫塑を依頼する時と同じような依頼であれば、そこで設計され建った建物は「作品」と言えるのでしょうが、世の多くの建物はそういった経緯で建築されていない事が多数です。その場合に作品と呼ぶのは? というのが外野にいる私の考えです。 一方で設計の仕事というと意匠設計にフォーカスされがちですが、建物を創造するためには実に多域に渡る専門家が介在します。一級建築士は構造や設備も勉強はしていますが、実務上は構造設計の専門家、設備設計の専門家が存在します。外構を含めてデザインする場合はランドスケープの専門家、設計内容によっては照明の専門家など、多くの専門家(プロ)が知恵を出し合って設計しています。建築家(意匠設計)はクライアントの意向を踏まえマネージメント・ディレクションを行いながら多数の専門家と協業して建築をデザインします。

クライアントがこの内幕を何処まで認識して建築家に依頼しているかはわかりませんが、クライアントからみれば自分が建てたい建物に対する解答の提示を建築家(設計者)に依頼している事と意味は同じで、クライアントは実は様々なプロが介在する仕事をワンストップで建築家に依頼しているのです。

そう、建築家はクライアントに対して「Solution」を提供しているのです(このような考え方を持っている私からすれば件の建築家のスタイルには賛同です)。


建築ビジュアライゼーション業界のSolutionとは

Solutionをどう捕らえるかにもよりますが、私はプロが行う個々の業務を指すものではなく、ある問題に対する包括的な解答の提示だと思っています。先の建築業界の話で例えれば、建物を建てるといった問題に対して、個別の問題を解決する事だけではなく、建物を建てるための全体的な解決を行う事と認識しています。あくまで私見ですので誤解されないようお願いしたいのですが、この考え方で話を進めます。

12solution_01.jpg
表現としての個々のSolution事例

長々とSolutionを定義してきましたが、翻って建築ビジュアライゼーション業界で考えるとどういう事になるのでしょうか。よく引き合いにだすパース制作を例に話すと、この場合はSolutionはコンペ自身だったり、販促のプロモーションなどがあたり、個にあたるパース制作はSolutionにはあたりません。アニメーションの場合も同じような事が言えます。

この事は何を指しているかというと、実はSolutionを求められるという事が仕事の始まりで、それを会社の内部外部を問わず誰かがワンストップで受託し、その下請け、孫請けとして個々の仕事が発生しているという事です。 建築ビジュアライゼーション業務の多くはSolutionの提示に対する下請け、孫請け業務が大半を占めているのが実情なのです。

そろそろ「冨田は何を言いたいんだ!」とイライラして来ている方もいるでしょうから、本題に入ります。今回のコラムの主眼とするところは、建築ビジュアライゼーションの仕事の受注を増やすためにどういった戦略を取るべきかという事です。その戦略上、Solutionという考え方が非常に重要になるので、長々とお話しをしてきました。これ以降は、具体的にお話ししていきたいと思います。


営業戦略としてのSolution

最初に、何故Solutionの一部の業務(パース制作等)では駄目なのでしょうか。

パース制作を行う会社ってかなりの数存在しますよね? という事は相対的に仕事量がかなり少ない事を意味します。これはアニメーションや、DTPRなどにも言えます。もっと建築ビジュアライゼーション業務を広く捕らえれば、DTPもWEB制作も入ります。それでは、パース制作とアニメーション制作を双方問題無く行える会社はどの位ありますかね? アニメーション制作が出来る会社はパース制作を行っている会社からすれば結構少ないと思います。仕事のきっかけがCGパースで、その後アニメーションに発展する事はそんなに珍しい事ではありません。「おたく、アニメーションは出来ないの? 」と言われて閉口してしまった事はありませんか? 又は最初から「パースを依頼したいが、後にアニメーションも作りたいんだが出来ますか? 」と聞かれた事はありませんか?

そうです、パース制作に加えてアニメーションが出来れば、相対的に仕事が増えるのです。更には一度の営業で2種類の仕事を受注できるのですから営業的にもお得です。簡単な例ではありますが経験された方も多いのではと思います。別の例で話すとWEB制作会社からCGパースの制作依頼を受けた事はありませんか?

もうお分かりかと思いますが、WEB制作が出来れば、最初からそのコンテンツであるCGパースやアニメーションを同時に受注する事が出来るのです。勿論ハイクオリティなものを作ろうと思えば、その道のプロが集まってコラボレーションしなくてはなりませんが、逆に言えば、プロを集める事ができるのなら、Solutionのマネージャー・ディレクターとして大きな仕事を受注出来るようになります(いつも声がかかるプロになるという手もありますが)。

「うちは猫の手も借りたいくらいにパース制作で忙しい! 」といった会社もあるでしょうが、そう言った仕事が上手く回っている会社こそ、資金がある時に業務内容を横に縦に伸ばして行くべきだと思います。実際に日々の業務に追われていると中々難しい事とは思いますが、今はマルチに動ける会社はあまり多くないように見受けられるので、今がチャンスとも言えます。


仕事を創造する

前段でのお話しは言われれば(言われなくても)わかる事柄だと思いますが、誰しもわかっている事とすれば、現状でマルチに立ち回れていてもいずれは相対的に仕事が減少していくことを意味しています。ではどうすれば良いのか?

これまではSolutionといいながらも、ある種定常的(一般的)な業務内容のお話しをしてきました。これは制作者側がSolutionを提供したというより、クライアントも重々分かっているSolutionを受託して制作したに過ぎません。Solutionとは問題を解決する事です。解決されている業務内容の制作だけを行っても、個々の制作と何ら変わりありません。クライアントが問題に感じている事に対して解決策を提示する事がここで取り上げているSolutionです。

そうです、クライアントが問題と感じている事、解決策を模索している事に対してSolutionを提示する=Solutionによって仕事を創造するのです。何かわかったようでわからないような話かもしれませんので、具体的な例でお話しします。


Solutionの提供

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Revitのレンダリング事例1

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Revitのレンダリング事例2

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レタッチの事例1

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レタッチの事例2
昨今の事例でお話しします。今大手のゼネンコンや組織事務所にはBIMという概念を元にした3次元CADが導入されて来ています。 Autodeskの商品で言えばRevitがそれにあたります。

Revitの場合はmental rayが実装されていて、マテリアルライブラリを使用する事で、設計者または設計者サイドで一定以上のレベルのパースがレンダリング出来てしまいます。こういうと仕事が減少している事と捕らえがちですが、これには続きがあります。設計側としてはRevitのレンダリングで問題無い局面は多数あるので、外注コストが削減できて喜ばしい事なんですが、若干の問題点も含んでいます。

パースが必要な局面は様々なので、Revitのレンダリングでは駄目でもっとクオリティを上げたい業務も存在します。設計側からみればせっかくRevitのレンダリングイメージがあるのに、CGパースを一から外注するのはもったいない気がします。かといってRevitのレンダリングイメージからクオリティの高い表現へ持っていけるとは思っていません。そういう会社に営業に行った際に、クライアントから「うちはRevitで設計者自らパースを起こしているので仕事は無いよ」と言われた時、「Revitのレンダリングイメージだけでは済まない業務とかはありませんか? Revitのレンダリングイメージを使って弊社ではレタッチによってクオリティを上げる事ができます。勿論モデリングやレンダリングを行いませんので、通常のパース制作費用の半分以下で出来ます。」と答えたらどうでしょうか。

すぐに仕事を発注して貰えるかは別として、件のクライアントはあなたの会社が記憶に残るでしょうし、本当にそういう事が起これば声をかけてくるのではないでしょうか。設計者が日頃抱えている問題点(発注すべき仕事と捕らえられていない事柄)に対してSolutionを提案をする事で仕事が創造できていないでしょうか。

ここで重要なのは何故このSolutionを提案出来たかです。CG制作者としてCGの技術に幅を持たせる事で出来た訳ではありません(CGパースを描いている人はレタッチもやっているでしょうから)。この場合にもっとも重要なのは建築業界の動向を知っていたかどうかの一点に尽きます。

私は本コラムでRevitの事を取り上げて、今後の建築業界の変化をお話ししてきていますが、そういう情報を目敏く収集している人なのか、設計者側の話として他山の石とたかをくくっているかで、Solutionの提示が出来るか否か、もっと言えば仕事を創造し受注出来るか否かの違いが出てくるのです。Solutionの提示には技術的な事は後の方の問題で(世の中には優秀な人が沢山いますので何とかなります)、そういったテクニカルな部分よりも業界動向とか、そこで起こっている事、それを問題点としてどう捕らえる事ができるのか、またそれらに対してどのようなSolutionを思いつくかといったソフト的な部分が明暗を分けます。

業界動向を知る

Solutionという観点で仕事の受注を考えれば、如何に情報収集が重要かという事がおわかりかと思います。今は情報の収集は簡単にネットで出来ますが、肌に感じるにはセミナーなどにどんどん参加した方がいいと思います。みなさんはCGに関するセミナーなどはどん欲に参加されているかと思いますが、設計者が語るCAD/CGに関するセミナーや、一瞬自分と畑違いと感じられるBIMのセミナーなどに足を運ばれれば新しい観点で建築ビジュアライゼーション業界を見る事が出来るようになると思います。私のような人間を捕まえて話を聞き出すのも手です。酒でも一杯盛れば、聞いてない事まで語り出す事請け合いです(笑)。私の例はほっといても、セミナー講演者やコラムなどを書いている人にコンタクトを取るのも1つの手ではないでしょうか。


最後に

Solutionをキーワードに話をしましたが、ご理解頂けたでしょうか。次回は仕事の創造という点でもう少し事例を挙げてお話ししたいと思います(あまり詳細に話すと弊社の守秘義務に関わってきますので(笑))。

最後の最後に宣伝で申し訳ありませんが、ようやくお話ししていた書籍の出版にこぎ着けました。内容は amazon あたりで見て頂くとして、この手の書籍ではこれまでにないようなアプローチで書いた本なので、私自身世の中にどの程度のニーズがあるか把握しきれていません。多くの方に手に取って頂き、この様な書籍のニーズあるとわかれば第2弾、3弾を考えていますので、宜しくお願いいたします。
また、11月に開催される AUJ で本書をもとにしたハンズオンセミナーを開催しますので、書籍の内容を肌に感じたいと思われる方は是非ご参加頂ければと思います。

更新日 2010.09.29
著者プロフィール
冨田 和弘
冨田 和弘
Next Picture株式会社 代表
1990から2007年まで大成建設設計本部に所属し、プレゼンテーションGrのプロジェクトリーダーとして建築家原広司氏、伊東豊雄氏との多数のプロジェクトをはじめ、大規模プロジェクト・海外プロジェクト・設計コンペ等にCGディレクター及びデザイナーとして参画。2008年に株式会社未来技術研究所の建築ビジュアライゼーションセンターの所長に就任。2009年より独立し現在に至る。2006年より京都大学建築学科非常勤講師。建築ビジュアライゼーションの講演、執筆多数。一級建築士。
HP:www.next-picture.co.jp

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