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株式会社 白組 
SPACE BATTLESHIP ヤマト 
Maya & 3ds Maxのデジタルパワーで"何処にもない世界"を一から創り、壊す「SPACE BATTLESHIP ヤマト」の挑戦

株式会社 白組 SPACE BATTLESHIP ヤマト Maya & 3ds Maxのデジタルパワーで
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1970年代半ばに少年期を送った多くの人にとって、テレビアニメ「宇宙戦艦ヤマト」はある種特別なアニメだ。社会現象に近いブームを生み出した人気作品というだけでなく、従来のアニメの常識を覆し、この世代に属するクリエイターの多くに大きな影響を与えた作品なのだ。「ALWAYS 三丁目の夕日」で映画賞を総嘗めにした映画監督/VFXディレクターであり、Autodesk Mayaの達人としても知られる山崎貴氏もそんな1人である。そして、その山崎氏の最新作が、シリーズ初の実写作品『SPACE BATTLESHIP ヤマト』。日本映画界を代表するキャスト・スタッフが結集した2010年屈指の大作である。ここでは、同作品のCG制作に関わる話題を中心に、山崎監督にお話をうかがった。

実写「ヤマト」の企画は他人には渡せない

山崎 貴 氏
監督・VFX
山崎 貴 氏

----山崎監督とヤマトの出会いはいつごろですか

山崎氏:小学5年生か6年生の時、それも再放送でした。当時、私は松本の方に住んでいたんですが、あの辺りでは「ヤマト」の本放送がなく、終了後1年くらい後の再放送で、ようやく見られるようになったんです。とにかく田舎で、学校まで1.5キロくらいあったため、放送のある日はその1.5キロを必死で走って帰って見てました。そうしないと見られない時間に放送してたんです。

----小学生時代は「ヤマト」をどんな風に感じてましたか?

山崎氏:当時、私はジュブナイル大好きのSF少年で、マンガもアニメも小説も片っ端から見たり読んだりしてましたが、「ヤマト」はそれらと全く違う大人っぽいSFでしたね。何しろ第1回に、肝心のヤマトがほとんど出てこないことにまずびっくり。荒れ果てた地球の描写もリアルで、絶望感がすごく伝わってくるんです。巨大ロボットのアニメはたくさんありましたが、宇宙船がミッションを持って旅するアニメなんて初めてで、すごいインパクトでした。まだ"染まって"ない少年時代に見たので、「刷り込み」に近い、原初的な部分で影響を受けている気がします。

----では、実写版ヤマトの依頼は嬉しかったでしょうね?

山崎氏:それはもう他ならぬヤマトですから(笑)、永年憧れ続けてきたスターにふいに声を掛けられたような気分で、声をかけてもらっただけでも幸福なことでした。ただ、だからこそリスクも大きいプロジェクトだと、同時に感じていました。日本映画界のあの制作環境で、あの予算で、「ヤマト」のような壮大なSFを実写映画化するのは相当大変だろう、と。実際、宇宙を舞台にした本格SFのジャンルで、日本映画はほとんど成功例がありません。幸い今回は木村君(木村拓哉氏)が参加してくれて、キャストもスタッフも制作予算も邦画としてはベストなものとなりましたが、それでも厳しいことに変わりはありません。......もちろん、そうはいっても「断る」という選択肢は全くなかったんですが。

----厳しい状況が明らかだったのに、なぜでしょう?

山崎氏:そりゃヤマトだから!ですよ(笑)。"実写で「ヤマト」を"という企画がそこにある以上、他人には渡せません。それにデジタルの時代となった今なら勝算もあるはず、とも思っていました。実際、10年前なら絶対できなかったことが、デジタルの力で可能になった例もすごく多いですよね。大規模なセットを作る必要があったシーンもデジタルなら簡単だし、そういう力を借りれば勝算も出てくるわけで。ハリウッドと比べても、予算規模の違いによる差は、デジタルの進化によってずいぶん縮まった実感があります。......とにかくこういう時、選択肢は2つあると思うんです。どうせ無理だからやらないというのと、無理かもしれないがやるという2つ。私は後者で、チャンスが少なくても行ける所まで行こう、と考えたんです。

"どこにもないもの"の世界を一から造り出す

さまざまなエフェクトを活用するためAutodesk 3ds MaxとRayfireをはじめとする多くのプラグインが活用された。画面は3dsMax上でRayfireを走らせ、ヤマトを覆う大地が大規模に崩落していくエフェクトを制作している。
映画の冒頭部分、赤茶けた大地に埋もれて廃虚のような状態になっている「ヤマト」のシーンをAutodesk Mayaを駆使して制作していく。

----デジタルが背中を押してくれた感じですね

山崎氏:たとえばカメラワーク1つ取っても、かつては非常に限られたカットでしかできなかったような動きも、デジタルなら自由自在です。モーション自体を細かく設定し、制約なく動かせるんですね。また、たとえば巨大な宇宙船と人間を一緒に映したくても、昔はコックピットの中の俳優さん、外観とカットを割るしかありませんでしたが、私は外から中へ一気に見せたいわけで、デジタルならそれができる。飛んでいる戦闘機にカメラがグーッと寄ると、コックピットの中に実際に俳優さんがいる、なんてカットも作れるわけです。

----表現の幅が広がった?

山崎氏:そうですね。さらにいえば、近年CGツールの進化により、多彩なエフェクトが可能になったのも大きいです。たとえば岩が大きく崩れるとか、ホコリが濛々と舞い上がるとか、昔だったらミニチュアを一気に壊すなど非常にリスキーな一発勝負で撮るしかないようなシーンでも、デジタルなら何度でも繰り返しトライできます。だいたい波動砲の発射だってそうでしょう? 昔だったら、その表現自体がすごく難しかったと思いますが、デジタルならさまざまな表現を、気が済むまでトライアル&エラーできるのです。

----昔はCGでリアルな質感を出すのは難しいといわれましたが

山崎氏:いまはレンダリング技術が非常に進化したので、ミニチュアそのもののような素材感も出せるようになりました。宇宙船などのブツもミニチュアに頼らなくても、比較的リアルなものがCGで作れるようになったんです。今回、リアルに塗装したミニチュアを撮影し、この画像データをテクスチャとしてCGモデルに貼り付けることで、リアルな素材感を備えた3Dモデルを作る手法を使いました。これは「三丁目の夕日」で開発した手法です。こういったCGのさまざまな進化が、「ヤマト」をやりたい、という私の気持ちを後押ししてくれたんです。裏返せば、デジタルなしでは、この「ヤマト」はあり得なかったでしょう。たとえば「三丁目の夕日」だったら、デジタルなしでも似たようなものは、なんとか作れたかもしれません。でも「ヤマト」は不可能。デジタルなしでは、絶対に存在し得なかった企画です。

----では、デジタル関連シーンは相当なボリュームに?

山崎氏:最終的にCGカットは総計500カット超。デジタル処理されたシーンは、上映時間2時間18分の約半分に達しています。この膨大なボリュームのデジタル制作は、私が属する白組の調布チームが中心となって行い、今回は外注さんもフルに活用したので、CG制作のスタッフ数は総計60名を越えました。私にとっても、かつてない大規模な制作体制でしたね。

----膨大な作業量だったと思いますが、一番大変だったのは?

山崎氏:今回は、基本的に俳優さんとの絡みがある等アップで使う戦闘機などのブツをミニチュアで造り、ヤマト本体をはじめ引きのカットが中心となるブツはCGで作る、という方針で、時間やコストのかかるミニチュア製作はできるだけ控えました。ところが逆にCGで作らなければならないブツの量が、想像を超えて膨大なものとなり、CG制作が予想外に大変なことになってしまったんです。私も幾つか経験を積んでそれなりに経験値が上がり、"このペースで進めれば、このへんでこうなって上手く行く"と分かるんですが、今回は一時まったく先が見えない状態となり、相当怖かったですね。もう終わらないんじゃないか、と......(笑)。

----なぜそんな計算違いが起ったんでしょう 山崎氏:これは、私のSF映画の制作に関する経験値不足が大きかったです。考えてみれば当然なんですが、ヤマトだけ作っても物語は語れません。雪風も必要だし、コスモタイガー等の戦闘機だって作らなければならない。もちろん敵のガミラス戦艦や空母も欠かせませんし、異星に着陸すれば、その異星の風景やキャラクタだって必要になるわけです。しかも困ったことに、これらはどれも"どこにも無いもの"なんですね。似たものを見つけてきてそれをベースに、というわけには行かず、全部を一から作らなければならない。まあ、これは現場のセット等でも同じですが、ある意味"世界"を造り上げる必要があった。スケジュールも予算もどんどんなくなる中、これは本当にきつかったです。あと、これとは別にCGツールについても問題が起りました。

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