プラチナゲームズ株式会社
VANQUISH(ヴァンキッシュ)

VANQUISH(ヴァンキッシュ)

主人公「サム」を自在に操り「ロシアの星」に占拠されたスペースコロニーの奪還を目指せ! ハイテンションでスタイリッシュな新感覚シューティング・アクション『VANQUISH(ヴァンキッシュ)」』が、2010年10月21日にプレイステーション 3とXbox 360 に向けて発売となった。

『VANQUISH』の最大の魅力は、その圧倒的なスピード感だ。主人公「サム」が身にまとうバトルスーツ"ARS"には「ブースト」と呼ばれる高速移動機能が搭載されている。敵の激しい攻撃を寸前で回避する時はもちろんのこと、巨大ボスの足元をハイスピードでくぐり抜け背後を取る動きや、一気に敵の懐に飛び込んで攻撃に転じるなど様々な場面でスピードが力を発揮する。「ブースト」による高速移動は、膠着状態に陥りがちであった従来のTPSとは一線を画する新たな戦略性をもたらしてくれる。

一方、ハイスピードな「ブースト」に対比してスローモーションを発動させる「ARモード」という機能も存在する。スローを発動させることで敵に照準をピンポイントで合わせやすくなるというメリットがあるのだ。また、スロー中には圧倒的な画面密度で展開される美しいグラフィックを体験出来るという別の楽しさもある。大量に飛び交う銃弾、美しい軌跡を描く無数のミサイル、被弾した敵が緻密に壊れゆく破片はプレイヤの脳に心地良い刺激を与えてくれる。

話題作の『BAYONETTA(ベヨネッタ)』に続き、『VANQUISH』の開発を手がけたのがプラチナゲームズ株式会社(以下、プラチナゲームズ)だ。『VANQUISH』の開発期間は、2008年2月~2010年5月の約2年であるという。まず、2009年12月までに基本構成を確立したプロトタイプを完成させるという目標に向かって開発は進められた。その後には、量産段階へと移行して開発スタッフの増員も行われたという。

グラフィックに関わるセクションの構成は、背景(最大20名)、モーション(最大5名)、モデル(最大7名)、カットシーン(15名)という構成で開発が進められた。週一度の進捗ミーティングでは各セクションの作業の進行状況が綿密に話し合われたという。万が一、あるセクションで遅れが発生しそうな場合は、リソースに流動性をもたせる調整も行われた。プラチナゲームズは、対面のコミュニケーションを特に重視して開発を行っているという。

非破壊アーキテクチャを活用したクオリティの追求

『VANQUISH』には、主人公と敵キャラクタに変形の要素が取り入れられている。そこで、キャラクタモデリングついて今村氏にお伺いした。デザイン画になるべく忠実なキャラクタモデリングを行うのが通常のプロセスである。しかし、今回は様々な変形のアイデアを取り入れながらモデルに変更を重ねることで完成形へと進化をさせていったという。場合によっては、カットシーンの演出表現から必要な変形要素を後からモデルに反映させるような対応を行ったという。

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世界観のベースとなった
コンセプトアート

こういったモデリング変更ではジオメトリ編集だけでなくテクスチャ編集やUVの微調整などの追加労力を伴う。より満足行くものをユーザに届けたいという考えから、あえて修正を重ねるアプローチでの作業が進められた。Softimageではキャラクタに骨を通した完成形に近い状態でも属性が壊れることを気にせずモデリング編集を行える。今村氏によると、この洗練された非破壊のアーキテクチャがクオリティ追求では大きなアドバンテージとなるという。また、これまで様々なソフトを利用してきたが、SoftimageのUV編集とエンベロープウェイト編集が最も手に馴染むという。UVの微調整でもスイスイとスナップを効かせながらストレスなく作業が行えたそうだ。

主人公「サム」のボディとフェイスには、カラー、スペキュラ、アンビエントオクリュージョン、ノーマルマップ、キューブ(環境)マップのテクスチャが1024X1024の解像度で使用されている。

また、ゲーム中では頂点カラーによるテクスチャブレンドで破壊の表現も行われている。主人公のヘルメットの変形もSoftimageでタイミングや動きが調整された。

背景制作と開発パイプラインの最適化

主人公は広いフィールドを高速移動する。そこで、スピードを出した際の背景モデルの見栄えと止まった状態での見栄えの両方に考慮して背景制作を行う必要があった。また、背景データの密度を高くしながらもメインであるキャラクタの視認性を損なわない表現にも苦労したと背景モデル担当の久禮氏は語ります。

Softimage上のCgfxによるプレビューでスペキュラやライトの質感確認が行える。このため何度も実機出力をせずにモデリングデータを効率的に仕上げることが出来たという。背景データの管理においてはパーツパーツの背景構成要素をカテゴリ分けしてデータベース化しているそうだ。同じテクスチャを使用するモデルではデータを共有するなどデータの冗長化を避けることが心がけられている。

レベルデザイン作業は、ゲームの面白さやゲームバランスの調整で重要な役割である。この業務を担当するプランナは、これまではプログラマの手を借りないと出力や調整の作業が行えなかった。そこで、今回は最終的なところまで一通りプランナ自身で調整が出来る環境が整えられた。具体的には、まずSoftimage上で簡易的なモデルの配置や入れ替えを簡単に行える仕組みの整備が行われた。そして、これらのデータを出力したゲームエンジン上で敵の動きやアルゴリズムの選択、各種フラグの設定までを行える環境がツールとして提供された。これにより、プログラマのリソースが解放され、他のエリアのクオリティアップに注力出来るようになったという。

久禮氏によると今世代機でのグラフィック技術もかなり据わってきた状況であるという。それらを参考にしながら今作でどう消化できるかをプロジェクト開始時に検討したという。その一つ選択として今回はディファードレンダリング技術の採用が決定された。ライトを毎フレーム純粋に描画させる負荷は高くなってしまう。そこで、ジオメトリ構造とライティングに必要なパラメータを事前にバッファデータとして計算しておくのだ。それらを利用してポストプロセスでライティング計算する手法がディファードレンダリングである。

ディファードレンダリングによって、背景シーン内の遠くに配置されたライトがプレイヤの周辺にも影響を及ぼしシェーディングや影に反映されているのがスクリーンショットからわかる。

後処理のために重複する計算の効率的な省略が可能なうえ、影響する対象以外には余分な計算は行わないことも処理の軽減につながる。また、動的なライトにも対応出来るだけでなく、理論上はライトの数を無限に増やせるという特長がある。こういった理由からパフォーマンスとクオリティをあげるために背景モデルを中心にディファードレンダリングが採用されている。一方、主人公のキャラクタには、よりリッチな表現を実現するために環境に応じた純粋なライティングによってリアルタイムレンダリングが行われている。

ラインが後半になると仕上がったキャラクタや背景など全ての要素を実機に出力してメモリ配分の調整が行われる。画面密度が高い『VANQUISH』だけに、後半データが出揃った際の調整には苦労したという。セクション毎に最適なメモリの分配を担当セクションのプログラマ主導で決定していくのだ。処理落ちせず、かつ最高のクオリティが出るように適切なメモリ配分の判断が下されていった。アーティスト側も出来る限りデータを最適化する工夫を凝らしながら日々作業を行っているという。例えば、横並びのデータ構造が多いと重くなるため、適切な階層構造を持たせるようデータは調整することを心がけているとう。また、ハードエッジやUVの切れ目をデータに含めない、登録メッシュ数の削減、ライトマップ用UVとカラーテクスチャUVをひとつに纏めるなど徹底的にデータ最適化の努力がSoftimageを利用して図られている。

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