株式会社カプコン 
ロストプラネット2における新しい映像表現

株式会社カプコン ロストプラネット2における新しい映像表現
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後実験年代A.T.12 - 惑星EDN-3rdでの入植事業は半世紀が過ぎようとしていた。見渡すかぎり雪原地帯であった極寒の惑星にも、温暖化の影響で局地的なジャングルや砂漠が発生していた。新資源T-ENGを巡る「雪賊」と原住生物エイクリッドとのバトルは長期戦の様相を呈する。そんななか惑星にとっても雪賊たちにとっても重大な変化が訪れようとしていた。

株式会社カプコン(以下カプコン)から発売中のプレイステーション3、Xbox360用ソフト 「ロストプラネット2」は、MT フレームワーク2.0を用いて制作された緻密なグラフィックやシリーズ初のオンライン協力プレイ(Co-op)対応などが話題を集めている。2010年10月には、DirectX11 技術を駆使してグラフィック表現がさらに増したWindows版のリリースも予定されている。

今回は「ロストプラネット2における新しい映像表現」と題して、カプコン・CS開発統括 制作部の加治 勇人氏にお話を伺った。

カプコンの制作パイプライン

カプコンのパイプラインでは、Softimageを全面的に採用しゲーム用の素材が制作されている。Softimageからの素材は、自社ゲームエンジン「MTフレームワーク2.0(以下、MTFW)」へと読み込まれ、マテリアル調整・クロス制御・ライティング・フィルタリング等のポストエフェクト作業が行われる。その他にもコリジョンの設定・モーションの制御等ゲーム制作に関わる多岐にわたる作業がMTFW上では行われる。これらの作業を完了した後に、それぞれのゲームプラットフォームに向けた最終調整が行われる。

ロストプラネット2には、大小様々な形状のクリーチャーが登場する。今回は、「ゴディアント」という爬虫類のようなクリーチャーを制作する工程について加治氏に詳しく解説頂いた。

まず初めに、どういう生き物であるかというイメージを固めるところから作業はスタートする。その際には、ゲーム性や攻撃手段も頭に入れながらデザイン検討が行われる。例えば、ゴディアントの場合は、巨大な生物なためプレイヤーを飲み込み体内での戦闘を繰り広げるといったコンセプトが決められていくのだ。

続いて、イメージを元に仮のモデル・モーション・プログラムを用いたテストが行われる。そのテスト段階で敵の大きさや弱点の位置等を決定していく。デザインとゲーム性の両方からアプローチしているところが、ロストプラネットシリーズの特徴であるという。

ロストプラネットの基本テクスチャは、BaseMap・NormalMap・MaskMap・ThinMapの4枚で形成されている。BaseMapはその名の通り基本となる下地のマップで、NormalMapは凹凸の情報マップ、 MaskMapは光の反射の制御マップ、ThinMapは光を表現するマップである。なお、ThinMapは、クリーチャーの弱点を示す表現に利用されている。

モデリング作業では、 Softimage を用いてまずベースとなるモデルが作成される。そして、ベースモデルを Mudbox にインポートしハイモデル化される。データは再度Softimageに戻され、Ultimapper でノーマルマップの生成が行われる。

ロストプラネット2で実現出来たことに、プレイヤーが巨大なクリーチャーに乗って戦うというシチュエーションがあげられる。ゲーム中では、プレイヤーがワイヤーを引っかけて敵にぶら下がるなど複雑なアクションが魅力である。クリーチャーも絶えずアクションをしているため、様々な状況に合わせてアタリの形状を変化させる必要があった。

背中に乗って戦うというシチュエーションを実現させるため、Softimageでクリーチャーの形状に合わせたアタリモデルが作成された。このアタリモデルは、クリーチャーの動きと連動して形状を変化させている。次に、MTFW上でアタリ用のプリミティブモデルがクリーチャーの形状に合わせて配置された。これらは形状の変化は無いが、それぞれの関節と連動して移動するよう設定される。この2つの組み合わせによりクリーチャーの激しい動きへの対応を可能とし、「背中に乗る」という困難なシチュエーションを実現させたのである。

カプコンでは、効率を測れる部分には積極的にモーションキャプチャーが導入されている。モーションキャプチャーを効果的に取り入れることで、制作コストの削減、品質の向上を実現しているのだ。

人間の動きであるキャプチャーデータをクリーチャーに利用するために、クリーチャーの関節に合わせたリグ制御がSoftimage上でセットアップされた。尻尾に関しては、身体の動きに合わせて自動計算される。こうして、重心の動き・タイミングなどの要所を押さえることでクリーチャーらしい動きに変換されるのだ。6本足のクリーチャーなどは、仕上がった結果だけを見れば、二人がかりの人間の動きからベースが構成されているとは分からないだろう。

手付やAnimationMixerを利用したモーション編集も行われている。

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