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Project Caravan 
Aiming 
広大なフィールド&数多のキャラクターを、手描きイラスト風の3Dで表現

Project Caravan Aiming 広大なフィールド&数多のキャラクターを、手描きイラスト風の3Dで表現

2017.02.10

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2016年8月、Aimingは同社が鋭意開発中のMMORPG『Project Caravan』(以降、『Caravan』)のPVを公開した。YouTubeにアップされた本PVは、11月時点で2万4千回以上再生されており、国内外のゲームファンの期待を集めている。9月に開催した 「Caravanスタッフ採用セミナー」には、当初の参加枠を上回る数のゲーム開発者や3Dアーティストが参加した。PVとセミナーがきっかけとなって入社にいたり、現在は本作の開発に参加しているスタッフもいるという。まだ未完成のゲームにも関わらず、多くのファンと業界関係者の注目を集められたことは大きな励みになっていると高屋敷 哲氏(プロデューサー)は語る。

「本作の開発は、椎葉(忠志氏/同社CEO )の『グラフィックスにこだわったプロジェクトを立ち上げてほしい』という要望からはじまりました。そのため、開発当初からグラフィックスのクオリティには最優先でこだわっています」(高屋敷氏)。本作の広大なフィールドと数多のキャラクターは、手描きイラスト風の美しい3Dで表現されており、その制作にはAutodeskのハイエンド3DツールであるMayaが使用されている。本記事では、高屋敷氏と久保貴美氏(アートディレクター/マネージャー)への取材を通して、最新の3Dスマートフォンゲームの開発事情をお伝えする。

▲左から高屋敷 哲氏(プロデューサー)、 久保貴美氏(アートディレクター/マネージャー)

PCモニタでも見劣りしない、ハイクオリティなフィールドを量産

▲2016年8月開催のAimingFES2016にて初公開された、『Project Caravan』のPV

本作は、スマートフォンとPCの双方から同一のサーバにアクセスできる、クロスプラットフォームのMMORPGとして開発されている。必然的に、スマートフォンでも軽快に動作するデータ管理と、PCの大きなモニタで見ても見劣りしない高品質なグラフィックス制作の両立が求められる。「スマートフォンゲームのクオリティは、日々進化しています。グラフィックスの面でも、ゲーム性の面でも、我々はその進化についていく必要があります。加えて、スマートフォンという単一のプラットフォームに安住することなく、他のプラットフォームへ進出したいという思いもありました」(高屋敷氏)。自ら高いハードルを設定することで、ゲームの価値はもちろん、自分たちの開発力が高まることもねらっての決断だったという。

本作の開発チームが発足したのは2015年11月で、当初の3ヶ月間は、高屋敷氏、久保氏をはじめ、Aiming東京本社に所属する10名未満のスタッフのみで試作が重ねられた。主なチームメンバーは企画1名(高屋敷氏)、アートディレクション1名(久保氏)、背景制作リーダー1名、キャラクター制作リーダー1名、エフェクト制作リーダー1名、プログラムリーダー2名(サーバサイドとクライアントサイド1名ずつ)などで、全員が『幻塔戦記グリフォン』(以降、『グリフォン』)の開発メンバーだった。『グリフォン』は、2013年6月にサービス開始した横スクロールのファンタジーアクションRPGで、Aimingを代表する人気作の1つだ。なお、本作のグラフィックスも3Dでつくられている。

「開発スピードを出したいなら、チームは少人数の方が良いですね。最初の試作では、『グリフォン』のアセットやプログラムデータをごっそりテストサーバにコピーして、どんどん見映えやシステムを変えていきました。『グリフォン』という土台の上に、新しいグラフィックス、ゲーム性、システムを積み重ね、世界観や仕様を固めていったのです」(高屋敷氏)。『グリフォン』の名残はつくり込みが本格化した現在も若干残っており、『Caravan』には『グリフォン』に登場したモンスターも登場する予定だ。「モデルのポリゴンデータはそのままですが、シェーダを変えることで『Caravan』の世界観に馴染ませています。リグやモーションも『Caravan』のシステムに合わせてつくり直しました」(久保氏)。3Dの場合、ポリゴンデータは同じでも、シェーダの設定を変更すれば、フォトリアル、セルルック、手描きイラスト風など、見映えを様々に変更できる。グラフィックスの方向性、データのつくり方などをあらかじめ決めておけば、大人数でデータを量産してもクオリティをコントロールしやすい点もメリットだという。

「開発当初から、『Caravan』では広大でリッチなフィールドを実現したいと考えていました。昨今のスマートフォンゲームは、フィールドも移動も簡略化・記号化されていて、空間性の感じられないものが多い。昔ながらのMMORPGで広いフィールドを探索してきた私のような世代と、若い世代とでは、ゲームの楽しみ方が随分ちがうなと感じています」(高屋敷氏)。フィールドを歩き、景色を眺め、ゲーム世界に没入する楽しさを全世代のプレイヤーに体験してもらうため、本作の開発ではハイクオリティなフィールドを量産できる体制を目指しているという。「PCでじっくりやり込みたいプレイヤーが堪能できるグラフィックスやクエストをふんだんに用意する一方で、スマートフォンでカジュアルに楽しめるオート移動、オートバトルの機能も搭載します。今はシステム設計の最終段階で、近日中に本格的な量産に入れる見通しです」(高屋敷氏)。

▲『Caravan』のために描かれたコンセプトアートの数々。都市、村、山林、神殿など、様々なフィールドがデザインされている。これらのアートの多くは、Aiming 台湾スタジオのアーティストが手がけている。「世界観のコア部分は東京チームが決定し、台湾チームにイメージを膨らませてもらっています。日本のカルチャーに憧れて育った若い世代が中心なので、我々に近いセンスをもっているうえ、パワーがあります」(高屋敷氏)

▲開発中の峡谷フィールド。広々とした空間と奥行き、豊かな色彩に驚くが、シェーダやノーマルマップを効果的に活用しているため表示負荷は高くないという。「フィールドを表示してキャラクターを歩かせるだけなら、それほど高いスペックは必要ありません」(高屋敷氏)。先に紹介したコンセプトアートを見れば一目瞭然のように、予定しているフィールドは種類が多く広大なため、クオリティを維持しつつ量産することが最大の課題だという

▲【上段左】開発中の森林フィールド/【上段右】木々に近寄っても一定レベルのディテールが表現されているため、没入感が損なわれない/【下段左】開発中の平原フィールド/【下段右】岩肌の細かい凹凸、細かく生え茂った草などが世界観を補強している

▲『Caravan』の世界には時間の流れがあり、同じ場所でも時間帯によって風景が変化する。【上段】は日中、【下段左】は夕方、【下段右】は夜の風景だ。時間帯が変われば、出現するモンスターも変化するという

▲フィールド内には水が流れているエリアもある。岸にぶつかった水の気泡、風に揺れる草木など、細かなディテールもなるべく表現したいという。「プラットフォームのスペックに応じて、キャラクターやフィールドのダイナミクス計算をオフにするなど、プレイヤーが快適に遊べる設計にする予定です」(高屋敷氏)

▲Aimingにはドット画の時代から広大なフィールドを表現してきた開発者が多数所属しており、その経験は『Caravan』のフィールド表現にも活かされている。「ドット画時代のマップチップ(小さな画像サイズのチップと呼ばれる部品をパズルのように組み合わせ、広大なマップを表現する手法)をアレンジして、フィールドを生成しています」(久保氏)。段差のあるマップチップ【上段左/下段左】と、そのワイヤフレーム【上段右/下段右】。マップチップ1枚あたりの広さは20×20m程度。これらはMayaで制作されている

▲Mayaで制作した多彩なマップチップをUnityにインポートし、それらを組み合わせてフィールドを表現している。同一メッシュのマップチップは1つのインスタンスで制御されており、インスタンスを変更すれば、その変更が全部のマップチップに適用される。マップチップを機械的に並べると陸地の輪郭線が直線になってしまうため、配置方法を工夫し、有機的で自然なカーブの輪郭線を表現している

ハッチングの方向や強弱は、アーティストが個別に調整

本作には、人間・エルフ・ドワーフ・オークなど6種族、合計150体を超えるキャラクターが登場し、最大6段階の進化も予定されている。これらのキャラクターを集めることも本作の楽しみの1つだという。「プレイヤーは最大6人編成のパーティをつくり、キャラバンと呼ばれる拠点を守りながら旅をします。フィールドで遭遇するモンスターも仲間にでき、キャラクター同様、経験を積ませれば進化します」(高屋敷氏)。前述の『グリフォン』から引き継いだモンスターはもちろん、新作のモンスターも多数登場する。猫やカピバラなど、現実世界にいる動物まで"モンスター"として登場するのは面白い。現実世界が少しだけ混ざることで、ゲーム世界の現実味が増すと高屋敷氏は解説する。

キャラクター、キャラバン、モンスターの陰影は、ハッチング(等間隔の斜線)で表現される。加えて、黒色の細い線でアウトラインが描かれるため、手描きイラストのような柔らかい印象の画になっている。このルックへ着地するまでに、様々なテイストのシェーダを試したと久保氏はふり返る。「フォトリアルなルックを検討した時期もありましたが、数ある既存のゲームの中にあって、埋もれない存在感や個性を発揮するなら、ノンフォトリアルの方が良いという結論になりました」(久保氏)。ハッチングはフィールドの陰影表現にも適用されており、キャラクターをフィールドに馴染ませたり、オブジェクトの立体感を出したりするのに効果を発揮している。

とりわけハッチングの入れ方にはこだわっており、斜線の方向や強弱をアーティストが調整できる仕組みをプログラマに構築してもらったという。「機械的にハッチングを入れるだけでは魅力的な画になりません。例えば、キャラクターの顔にはハッチングを入れたくない。でも、髪の陰には入れたいといったさじ加減を、テクスチャデータのアルファチャンネルで操作できるようにしています」(久保氏)。なお、データを複雑にしないため、アルファチャンネルの上限は5枚にしているそうだ。前述の通り、制作するキャラクターの数は膨大にあるため、まずは全キャラクターに共通の設定を適用し、プレイヤーの目に触れる機会の多いキャラクターほど時間をかけて見映えを調整している。

▲ドワーフ【上段】、人間【下段左】、オーク【下段右】のデザイン画。進化の段階は星印で表されている

▲キャラクターのデザイン画と、モデリング中のMayaの画面。画面では見えないが、3段目のドワーフは装備下の顔もモデリングされている。『グリフォン』のキャラクターは平均2,000ポリゴンだったが、『Caravan』のキャラクターは3,000∼4,000ポリゴンで造形されており、ディテールが増している

▲キャラクターのテクスチャ。カラーマップ【上段左】、ノーマルマップ【上段右】、スペキュラマップ【下段左】、ライト反映度の制御用マスク【下段右】。テクスチャのサイズは最大で1,024×1,024pixelだ。目や顔には、とりわけ多くのpixelが割り振られている

▲フィールドに登場するモンスター。キャラクター同様、パーティの仲間に加えられる

▲"モンスター"として登場するカピバラ【左】と猫【右】。どこから見ても、普通のカピバラと猫である。例えば、複数の猫を引き連れたパーティも編成可能だという

▲【左】ハッチングやアウトラインのシェーダを適用したキャラクター/【右】クロースアップで見ると、場所によってハッチングの方向や強弱がちがうことがわかる。髪や服の陰にはハッチングが強めにかかっているが、肌にはほとんどかかっていない

▲ハッチングのかかる方向は、テクスチャのUV座標で調整する

▲ハッチングのかかる方向は、テクスチャのUV座標で調整する

▲フィールドの陰影部分にもハッチングを適用している。【左】は適用前。【右】は適用後。フィールドのハッチングにはノーマルマップも組み合わせており、ハッチングの線に沿った微妙な凹凸が付けられている。「ハッチングだけでは平坦に見えるので、ノーマルマップによる凹凸を組み合わせ、立体感を出しています」(高屋敷氏)

▲【左】キャラクター(画面左)とキャラバン(画面右)。フィールド探索時にはリーダーキャラクターとキャラバンのみが表示される。キャラバンの内装と外装はカスタマイズ可能で、例えば砲塔・煙突・旗などを外装に追加できる/【右】バトル中のパーティ。このように多数のキャラクターが入り乱れ、エフェクトを同時多発させると、とりわけ処理負荷が高くなる。ここでのデータ管理には特に気を使っているという

ゲームの世界観に合わせ、ダイナミクスやエフェクトを調整

本作はキャラクターのモーションにもこだわっており、ポリゴンの増加に合わせてボーンの数も増やされた。『グリフォン』では平均30∼40本、最大でも70本未満だったボーンが、『Caravan』では80本程度まで増やされている。ボーンの基本構造は変わっていないが、本作では髪・衣服・アクセサリーなどのゆれものにダイナミクスを適用しているため、ゆれもの用ボーンが各キャラクターに追加されたという。「やわらかい動きをさせるには、ある程度の数のボーンが必要でした。ただし、リアルな動きにしすぎると世界観から浮いてしまうし、めり込み制御が大変です。そのためアニメーターが手を加え、動きをデフォルメしています」(久保氏)。

エフェクトはSPARK GEARで制作しており、本作のエフェクトチームにはSPARK GEARの開発スタッフも参加している。「本作の試作にあたり、初めてSPARK GEARを導入し、アーティストたちに使ってもらいました。高品質なエフェクト制作が可能で、しかも量産に向いているツールだったので、今では本格的に使っています」(高屋敷氏)。前述のダイナミクス同様、エフェクトも世界観に合わせた調整を加えている。「リアルなエフェクトではなく、日本のセルルックアニメのようなデフォルメされたエフェクトを目指しています」(久保氏)。

続々と新作が登場するスマートフォンゲーム市場。その進化は留まることがなく、ついにはPCにも対応するクロスプラットフォームのMMORPGが開発されるまでになった。『Caravan』のサービスが開始されるとき、そのグラフィックスがどこまで進化しているのか非常に楽しみだ。一方で、MayaをはじめとするAutodeskのツール群が真価を発揮するフィールドが、益々広がっていくことも間違いないだろう。今後のスマートフォンゲーム開発と、そこでの3D制作のあり方に、引き続き注目していきたい。

▲【左】人型のキャラクターの足にはIKが設定されており、自然な仕草で足が地面に設置するようになっている/【右】モンスターのコントローラ。ボーン数の増加に比例して、コントロールできる範囲も増えている

▲ドワーフの攻撃モーション。投石時の重さを表現する予備動作に多くのフレームが使われている。背中に背負っているプロペラがちゃんと回転しており、動きに愛嬌を加えている点も面白い

▲キャラクターの髪とスカートにはダイナミクスが設定されており、フィールド内の風にふかれてゆれるようになっている。大気中を粒子が飛び交い、木の葉や枝、その落ち影がゆれる様子にも注目してほしい

▲SPARK GEARとUnityを併用したエフェクトの制作工程を紹介する。【左】SPARK GEARの作業画面。氷や煙など、エフェクトを構成する素材群が左上に表示されている。これらを描画するタイミングを、右下のタイムラインで調整している/【右】Unityの作業画面。右側は編集画面、左側はゲーム画面。右側での編集結果を受けて、ゲーム内での実際の見映えが左側に表示される。このUnityのデータと、【左】のSPARK GEARのデータは連動しており、SPARK GEARでの調整結果も、リアルタイムにUnityへと反映される。「ライトの影響具合、背景との兼ね合いなどをUnityで確認しながら、リアルタイムにSPARK GEARのデータを編集できるため、直感的で迅速なエフェクト制作が可能です」(久保氏)

▲【左】SPARK GEARで制作したエフェクトに、Unity上でブルーム効果(エフェクトが発する光によって、周囲の物体が照らされる効果)を加えている/【右】同じく、ブラー効果を加えている

▲前述の過程を経て制作したエフェクトを使ったバトルシーン

▲複数のキャラクターと魔法エフェクトが入り乱れるリッチなバトルシーン

▲【左】ゴブリンによる炎系魔法/【右】同じく風系魔法

▲氷系魔法のエフェクト

▲剣攻撃のエフェクト

TEXT_尾形美幸(CGWORLD)
PHOTO_弘田充

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