ミズノ株式会社 
Mayaによるリアルな3D人体モデルがミズノのウエア基幹機能を支える

ミズノ株式会社 Mayaによるリアルな3D人体モデルがミズノのウエア基幹機能を支える
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プロモーション用に渡辺氏が製作したシューズのCG。設計者が3次元CADで製作した製品のモデルデータをIGES形式等を介してMayaで読み込み、各種のビジュアライゼーションを作りあげる。
プロモーション用に渡辺氏が製作したシューズのCG。設計者が3次元CADで製作した製品のモデルデータをIGES形式等を介してMayaで読み込み、各種のビジュアライゼーションを作りあげる。
渡辺良信 氏
ミズノ株式会社
商品開発本部
研究開発部
研究開発課
渡辺良信 氏

近年、スポーツ品の分野では、運動生理学やバイオメカニクスなどの研究成果を活かし、より高度な機能性を持たせたモノづくりが始まっている。そして、その最先端を走っているのが世界屈指の総合スポーツ品メーカー、ミズノである。そんな同社のモノづくりにおけるもっとも先鋭的な試みの1つが、 Autodesk® Maya® による独自の3D人体モデルの開発と活用だ。高機能ウエアの開発期間を飛躍的に短縮し、コストダウンと品質向上に大きな威力を発揮する、この3D人体モデル「マルチボディ」を使ったミズノウエア基幹技術Virtual Body Designの開発を担当した同社研究開発課の渡辺良信氏にお話をうかがった。

人体の動きや皮膚の伸縮をどこまでもリアルに

10台のカメラを使用した社内のモーションキャプチャーシステム。バイオメカ二クス実験やトップ選手の動作解析に利用。
10台のカメラを使用した社内のモーションキャプチャーシステム。バイオメカ二クス実験やトップ選手の動作解析に利用。

「Virtual Body Design開発のきっかけは、アテネオリンピック。その約2年前の2002年ごろ、当時、デザイナーだった私に研究開発課から協力要請があったんです」。当時、ミズノ社内で唯一のMayaの使い手として、「本業」のシューズデザインの傍ら製品サンプルの事前検証用モデルや各種のプロモーション用CG をMayaで作成していた渡辺氏に、アテネオリンピック用の競技ウエア開発への協力が要請されたのだ。内容はMayaを用いてリアルな「人間の動き」を再現。高機能なウエア開発に活かそうというのである。――あくまで試験的なチャレンジだったが、業界でも前例のないこの試みはオリンピックで一定の成果をあげ、それをきっかけに渡辺氏自身も大きな転機を迎える。オリンピック直後、研究開発課への異動の辞令が出たのだ。

肩甲骨の動きを再現。肩の周りの皮膚の皴をチェックしている。
肩甲骨の動きを再現。肩の周りの皮膚の皴をチェックしている。

「研究開発課で与えられたミッションは、オリンピックで試用したミズノウエア基幹技術Virtual Body Designの「マルチボディ」を、ウエア開発ツールとして完成させることでした。競技用ウエアにも高度な機能が求められる時代にあって、特に技術志向の強い当社では、機能で特化することが重要な課題だったのです」。ウエアの機能を決めるのは、素材自体が持つ機能の効果、立体編みなどの製法による効果、そして各種の機能素材を組み合わせ、人体の動きを的確にサポートするカッティングによる効果という3点。中でも重要なテーマが、個々の競技の人体の動きに最適化され、その動きを的確にサポートして無用なストレスを無くす「高度に機能的なカッティング」の実現だった。

解剖学的に腕の構造を再現するためのテストモデル。回転に関しての連動性などを多角的に検討していく。
解剖学的に腕の構造を再現するためのテストモデル。回転に関しての連動性などを多角的に検討していく。

「そのためには各競技の人体の動きを忠実に再現し、ウエアと接する皮膚の伸縮まで検証しなければなりません。しかし実際に人体で検証するには膨大な手間と時間、コストがかかっていました。そこでMayaで人体そのままの3D人体モデルを作り、これをウエア開発ツールとして活用しようと考えたのです」。すなわち、一流選手からモーションキャプチャーした「競技におけるリアルな人体の動き」を、この3D人体モデルで再現し、そのバーチャル皮膚の伸縮量や挙動を解析。全身の皮膚のどこが伸びどこが縮むかを検証して、より高機能なウエア設計を効率的に行おうと言うのである。

――問題は人体の構造や皮膚、そして動きをMayaのCGでどこまでリアルに、精密に再現できるかだった。

開発期間を数千時間短縮した劇的な導入効果

完成した「Virtual Body」システム画面、専用ウィンドも作り汎用性を持たせてある。
完成した「Virtual Body」システム画面、専用ウィンドも作り汎用性を持たせてある。

「キャラクタ制作はMayaの得意分野の一つですが、ゲームなど映像系のキャラクタはカッコよく、きれいに見せることが優先で、人体そのままとはいえません。私たちが求めるリアルな3D人体を実現するには、骨格や筋肉などの構造を本物通りにするのはもちろん、解剖学的・人間工学的なアプローチが必要でした」。

例えば人間の腕は、手首を回すとその可動域に達した所で、ヒジから肩へと上腕も追随していく形で動いていく。こうした複雑な動きを各部位ごとに再現し、独自の構造システムで制御。また、関節を曲げた時の角度による筋肉の盛り上がり方/潰れかた、それぞれの動きなどもMayaの変形機能等で忠実に再現していった。

「特に肩甲上腕リズムと呼ばれる動作の肩甲骨と鎖骨と上腕骨の動きが非常に複雑で、苦労しました。当課に解剖学や人間工学の専門家がいるので教えてもらい、私も専門書を読んでずいぶん勉強しました。またCGに関しても外部との連携もとっておりましたので開発の技術的支援もしていただきました」。

渡辺氏がここまでこだわったのも、人体の動きを3D人体モデルの皮膚ポリゴンに忠実に反映させるためだったが、この皮膚伸縮の再現自体、非常な困難の連続だった。単純にヒジを曲げるだけの動作でも、人間の皮膚は決して均一には伸縮しはない。部位により比率を変えながら不均一に、複雑に伸び縮みするのである。

「アニメなら均一に伸縮させてきれいに見えれば良いのですが、我々には役に立ちません。結局、自分も含め人体の関節を曲げ伸ばししながら数百カ所計測し、入れ込んでいきました」。

さらに渡辺氏はこう言葉を続ける。

「生活動作、スポーツの動作解析の依頼はさまざまです。これに対応すべく動作レベルによって解剖学通り動作する半自動制御システムとキャプチャーで取り込んだデータを扱える両立するシステムが必要でした。これらを考慮することで、このシステム開発の第二の壁となりましたが、業務効率を上げ、このシステムを構築する意味として必要不可欠でした。具体的にはMayaとMotionBuilderのフルボディIKの関節可動域に当たる回転角のリミットのコネクションがキーになりましたが、最終的にはうまく回避できました」。

こうしてMayaのあらゆる機能を駆使しながら、約2年に及ぶ開発期間を経て 2006年秋、Virtual Body Designの「マルチボディ」は完成した。そして、それは即座に、同社のウエア開発にかつてないほどのイノベーションをもたらした。そのもっとも大きな効果は、「圧倒的」といえるほどの開発期間の短縮だ。従来1~2カ月もかかっていた動作と皮膚伸縮のシミュレーション/計測を、マルチボディはわずか2~3日で完了。開発期間やコストを劇的に削減したのである。もちろん動作等のバリエーションの検証も容易で、品質向上にも大きく寄与した。渡辺氏によれば、このVirtual Body Designを用いた全く新しい競技ウエアや新たな分野に向けたウエアが、間もなく発表の予定だと言う。

「自由度が高く、感覚的に使えるMayaは、一見、プロダクトの世界とは正反対のイメージですが、だからこそ活用の可能性も大きいんです。マルチボディのように数値でしか表せなかったものをビジュアライゼーション化することは、研究開発分野でも強く求められており、アイデア次第でいくらでも活用できます。私も Virtual Body Designのウエア以外への展開などいろいろ計画中で、今後がますます楽しみです」。

ミズノ株式会社
創業:1906年
資本金:261億3,700万円(2006年2月)
売上高:1,522億8,800万円(2006年3月期)
従業員数:1,831名(2006年2月)
事業概要:スポーツグッズ、スポーツウエアなどスポーツに関わる
製品の製造、卸売、販売。 各種スクール事業

導入製品/ソリューション Autodesk Maya
導入目的 ・製品プロモーションに使用するより品質の高い3D CGの効率的な制作
・製品開発の各種シミュレーション用のVirtual Body Designの「マルチボディ」の効果的/効率的な開発
導入効果 ・プロモーション/製品開発双方でのビジュアライゼーション活用範囲の拡大
・Virtual Body Design活用による、製品開発期間/コストの縮減
・Virtual Body Designの活用により各種シミュレーションが効率化し品質向上
・タイムリーかつ効果的なプロモーション展開
・タイムリーかつ効果的な社内アピール
今後の展開 ・競技ウエア以外のジャンルへの展開
・マルチボディの女性用バージョンなどバリエーション開発
・クロスシミュレータとの連携
編集後記 6月1日に発表された、ミズノブランドの水着の設計でも、MayaをベースにしたVirtual Body Designが活躍しています。
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